「即興詩人」
毎日、暢気に「看板屋さん」を 演じて暮らすつもりではじめた筈、
それが今じゃ、どうですぅ〜
抜き差しならねぇ、底なし沼、
もっとも、その泥の中で愉しんでいる気持も
ほんの、ちょこっとは 、ないとはいえませんデス、
でも、
そんなぁ〜クレーム、重箱の隅、つっついても出てきませんぜ、
値引き?あっ、見積もり出して、お互い、納得づくで
はじめた仕事じゃ〜
えぇ〜納期を縮めろですってぇ〜
そ、そりゃ、アアタ、ム、ムリの二階建てですぜ、
とかく、こんな嬉しい場面をいくつ、越え・・・・・もとい
いくつ顔、ぶっつけて来たことでしょう、
自慢のイケ面もイケないツラになりやした、とかなんとか。
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「銀ちゃん、久しぶりだねぇ〜」
「あっ、と、富次姐さん」
「あのさぁ、知り合いのお店の看板、頼まれちゃくれないかな」
「えぇ、いいですよ」
「それがさぁ、支払いのことなんだけど、看板が仕上がって、一月後って条件なんだけど」
「へい、半年手形なんぞより、ず〜と、ましでさぁ」
「そうかい、そう言ってもらえると、何だか・・・・」
「何を言ってるんです、富次姐さんと 、あっしの仲じゃないですか、他人行儀な・・・・」
「ちょ、ちょっと待っておくれよ、仲とか、他人じゃないとか、変なこと言わないでおくれ」
「え、そ、そんなつもりじゃ、あっしは、ただ・・・・・」
「そうだよ、あたしは、ただの知り合い・・・だからね」
(何でぇ、久しぶりに顔出したと思ったら、これかい、なんでぇ、こっちの方から
ご免蒙りたいや)
「え、今、何か言ったかい」
「いいえ、相変わらず、美しいねぇ、とかなんとか」
「銀ちゃん、おまえさんも相も変わらず、軽いねぇ〜」
「はぁ・・・・・・二の句が・・・・・」
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