『看板屋の休息』
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銀ちゃん、お前さんは、イラチと言うか
せっかちなんだよ
ただでも、この先は短けぇんだから
もっとさぁ、ドーンと構えて
悠然と仕事できないのかねぇ〜
そんなに急いで、どこへ行くつもりなんだよ、
どうせサ、ちっちゃい木の箱に入るだけなんだよ
あっ、あっ、あっ言わせておけばぁ
あのネ、仕事ってものはリズムなんだよ
序破急ってサ、
トン、・・トン・・トントント〜ンって・・・・
えぇ〜リズム?だって
じゃ、あのね、作業中の、あの、ものすっごく、くだらなくて
つまいない、なに、ダジャレのような、おちない話
あれ、やめてくださいナ
やめてくださいナって
あれはだな、仕事の潤滑油みたいなもんよ、
だって、ビス打つたび、ガクって
チカラ抜けちゃうんだよ
ふ〜ん、あっそう、
フランス的ジョークが理解できない?
ワタクシが、ただのアホ話をしているとでも、お思いかい?
奥山君、そうなの・・・どうなの、
はい、銀ちゃんの話は・・・え〜と、え〜と、
どうなのサ
あのぅ、この仕事終わってからの返答でいいですかぁ?
なぜに?
だって、今、へそ曲げられても・・・・
構ゃしないから、言ってごらんよ、
ホントに怒らない?
あぁ
あのね、今、マスク買ってくるから
作業中は付けておいてもらえますかぁ〜
マ、マスクゥ〜
できれば、お口に合う、チャックでも・・・・
あ、あのね・・・・・「もうぉ・・・・知ら〜ん」
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「夕月や 涼みがてらの 墓参り」 小林一茶
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