『うわの空の看板屋』
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ほら、3年前、急な看板頼んだ私、憶えてらっしゃいますぅ?
(う〜ん、何で、こんな、きれいな人・・・・記憶が・・・・・ない)
親切にいろいろ相談に乗ってくれたじゃない
(女性には特別親切にしてるんだけど・・・・・)
まだ、私のこと思い出さない?
(う〜んと、誰だっけ?)
スタンド看板で、すんごく、お安くしていただいて・・・・・
(すんごく安くは、いつもの悪いクセなんだけど・・・・・)
私がピンクが好きだっていったら、赤の方が無難ですよって・・・・・)
(そんなこと、言ったっけ)
ねぇ、まだ想いだしてくれないの、不しあわせ企画さん・・・・
えっ、ち、違いますよぉ、うちは寝よサイン、銀ちゃん看板店ですよ、
あら、そうなの、ごめんなさい・・・・・
(・・・・って行っちゃったよ)
いつもの調子で適当に 合わせなくってよかった、よかった、ホッ
だって、あれだけの美人、忘れようたって・・・・・
自慢じゃないけど、
かみさんの顔
忘れても、憶えて・・・・いる・・・・
いててぇてて・・・・・・
わかりましたよ・・・・ご飯、早く食べろ・・・でしょ、
あ〜ぁ、何だか、気ィ抜けちゃったなぁ〜
ごはん、ごはん、ごはん
何で毎日判で押したように・・・・ご飯なんでしょ?
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「 ただいまと 骨壷に言ふ 寒さかな 」 恩田侑布子
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