『垂れ幕看板』
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この無茶苦茶暑くて
やり切れないようなお盆の日
東海道をトボトボと勢州まで行ってきまスタ
旅の途中、関宿で偶然にも奥山堂の主人を見かけましたが
二度ばかり、チラっと顔を見ただけで
そんなに懇意でないので目で会釈して別れました、
それから一路、東海道から 別れ
亀山、下庄、とテクテク歩き
夢が丘まで来ると日も、とっぷりと暮れゆき
東の空には、お天道様と見まごうような
まっ赤な月と道中会話しながら
めざす津の海岸町に草鞋の紐を解きました。
近くの「めしや、食道園」で焼肉を食し、
大好きな生センマイでお腹いっぱいになったところで
驚いたことに、そこでも偶然、奥山堂の若主人に出くわし
以前世話になったので、どうしても焼肉の勘定を
持たせてくれと泣いて懇願され
困惑しながらも、御馳走になることにして
その上、若主人、何を思ったのか
今夜は、どうしても江戸橋の家に泊まって欲しい
あまり、親しくはないが
そこまで言わるるのなら、是非もない
身共も旅人の空、知らぬ他国で
お世話になることにして
明朝早くに伊勢神宮(外宮)に向かうこととして
早くに寝床に付く
家族の人は誰もいないらしい
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「銀ちゃん、銀ちゃ〜ん 」
「えっ」
「もう、いいかげんに起きないと・・・・」
「あっ奥山黒板の紳ちゃんやん」
「紳ちゃんじゃないやん、いきなりやって来て、泊めろっ、高い洋酒のませろとか
訳のわからない例の無駄話の機関銃トークばかり、さんざ、しゃべり倒して
もう、いい加減起きてくださいよォ」
ちょ、ちょっと待って、
まだ、寝ぼけ頭で・・・・・・・
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「ながながと 糸瓜垂れをり 揺れもせで」 小澤 實
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