『人生って不思議ですね看板屋さん。』
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え〜、世の中は相変わらず暑い日しかないような、
その上、五輪、五輪と熱い日が続いておりますが
お盆が近づいて来たせいなのでしょうか、
日中、何となく、いや〜な静寂を感じてしまいます、
遠くに目をやれば、山も雲も空も
乾ききった、ドライな連中の景色ばかり
そんな中、手前どもも、浮世の慣わしって哀しいでゲスね
どう、抗おうと、所詮小さな、弱い力、
何か、こう、
目ェ、つぶって、腕組してたら「チャリン」なんて銭が・・・
銀ちゃん、それだったら近くの橋のたもとで
ムシロなんか敷いて、目ェつぶってたらさぁ
「チャリン」なんてぇ・・・・・
あ、あのね、怒るよ、
アタシはねぇ、この明晰なる頭脳を使ってさぁ
遊んでいても、世の中の風に左右されない儲け口を考えてんだよ、
へぇ〜初めて知りやした、
迷責なる頭脳の持ち主・・・・
どうか、ご自分を責めたり、迷ったり・・・・
うるさいなぁ、ちょっと黙っててくんないかなぁ
ここで、あなたのような、ガサツなお人と話、してる間にも
看板の注文が入ってくる、
アタシはねぇ、そればっかり、二十四時間考えてんですよ、
えっ、じゃ、いつ寝るのかって
あのね、昼行灯に休息はいらないんですよ、
考えることが、休養なんですから、
昔から言うじゃないですか
「下手な考え休むに似たり」って
あぁ、なるほど、
ついでに「下手な鉄砲、数撃ってもあたらねぇ」って・・・・
「あ、あのネ」
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「 大きな木 大きな木陰 夏休み 」 宇多 喜代子
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