『無花果の木の下で』
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中学二年の時の話
遥か半世紀前のことです、
久しぶりでT君と
家の前の無花果の木の下で
記憶では2時間くらい話をした、
彼は父子家庭の長男、下に妹と弟がいた、
もっぱら、彼がその二人の面倒をみる暮らし、
その日、彼が以前住んでた田舎の話で僕たち二人は
盛り上がり、今度いつか、山菜採りにいく約束をして
その日は別れた、
それから半年足らずで彼は亡くなった、
ずっと心臓が悪いのは知っていたのだが、
小学5年のとき、彼が引っ越してきて同じクラスになった
その当時、一億みんな総貧乏っていうか
何をもって貧富の差があるのかさえ、よくわからない時代ではあった、
ある日、学校で、貧しさゆえに彼が何人かにイジメられていた、
その時、僕は、彼を庇うどころか、そのイジメ側に参加していた、
そのことが、ずっと心のトゲとなり
歳月が経ても、時々思い出されて来て
謝ろうにも、彼が、いないことを
心哀しく思う、
センチメンタルな気持ちでなく
私は彼の分まで生きてきただろうか、
山菜採りは、もうすぐじゃなく
一緒に行ける日が
確実に近づいて来てるのは確かなり
でも、
彼の分まで
もうちょっと、思い切り
「憎まれジジィ、世に憚ってやる」
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