看板娘

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少しばかり以前
「看板のことで来てください」

辿りついたら、もうちょっとで岡山県

・・・・・んで

質問攻めに

答えて、答えて

一円にもならないこと承知のうえ

喋って喋って

その後、お客様からは音沙汰なし

失敬とか無礼とか頭ン中駆け巡るが

行ったも自分

喋り倒したのもワタクシ

♪♪-誰のせいでも、ありゃしない、みんな俺らが悪いのさ-♪♪

でも、高速代、費やした時間給（時給三両）

返せ、戻せ〜・・・・・・・自分に言いな

こんなこと

日常茶飯事

だから、儲けとか、黒字とか利益隠しとか無縁なり

赤字、運転資金を自動車から自転車操業に切り換える

体力勝負の看板屋

自慢の頭脳の出番なし

ついでに、頭脳の中も妖しいものだらけ

でもね人間、嘆きばかりではないぞ、

人生、捨てる神あらば拾う紙（段ボール？）あり

前述の真逆もあるダス

「看板屋さん来てください」

隣町で、お好きなように デザインして

予算は言い値（イイネ、いいね）

あっ、領収書、今、持ってるぅ〜

ない？それじゃ名刺のウラにでも、受け取り書いてよ

今、半分払っとくからぁ〜

（こ、これで、ペダル踏む足も休めて・・・・）

お客様は妙齢の目の横に小さなほくろがあって・・・・

「銀ちゃん、銀ちゃんったらぁ起きなさいよ、まだ日は高いよォ

そんな所でうたた寝したら、風邪ひいちゃうよ」

「あぁ、と、富次姐さん」

「ほくろって寝言、言ってたけど何だい」

（夢かぁ・・・この世なんか夢みたいなもんだよナ）

「ねぇ、ほくろって？・・・・・」

「もう、勘弁して・・・・・クダサイませ」

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「蛍火を　夢の続きに　持ち帰る」　　　　大橋麻沙子

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ほんと言うと看板屋さんなんかに、なるつもりなかった、

・・・・・って今更なに言うだぁ

だって、看板屋って、面倒くさいよォ

第一、いろんな知識必要やよ

そうそう、広〜く、浅〜い、知ったかぶりぶりみたいな

とにかく、多いねん、

あれも、これも・・・・そんなん、できるかぁ〜って言うくらい

だいたい、材料が多すぎやねん

紙から始まって、あれこれ、コンクリートまで

そんなん無理やん

だから、適当、適当でえぇねん、

長〜くやってると、そのうち、頭の中、知識、知識、知識で満杯になんねん、

いきなり想定外の質問、直球で投げてくる、おばはん（失礼）

時々、おんねん、

そん時は、わからんものは、わからんって素直に言うときィ

でもなぁ

あんまし、あれも、わからへん、これもわからんじゃ

お客さん、不安がるからぁ

そこは、それ

うまく、泳がな・・・・

もう、泳ぎ疲れて、溺れそうや。

去年、車で箱根行って

鎌倉、正確には逗子に３度ばかり行って

この春に６年目の乗用車、やっと１万ＫＭ超え

いかに、普段、ほこり被って陳列状態か・・・・・

鎌倉って、いつも、いつも人でいっぱい

湘南って混むって代名詞

なぜに、あんなに鎌倉の大仏見に来るの

鶴岡八幡宮は・・・・わかる、何となく・・・いい

「新東名」はきれいで走りやすかったデス

「新名神」のお陰で、琵琶湖回らないで、

関ヶ原も通らないで、時間にして１時間半は得、

町田から横横道路で６時間ちょっとで行ける

新幹線利用する時間と余り変わらない

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だ・か・らぁ　最初っから、そう言ってんのに

安けりゃいいんだったら

お客さん、余所当たってくんな

・・・・・と、と、と、、まぁ待ってくださいよォ

そう、はい、そうですかって行かれちゃ

アタクシも商売がやりにくくていけないや、

もう、少し、大人の対応・・・・・

なに？看板屋さんが投げた石？

えぇまぁ・・・ここは、その通りといたしましょ

それで、この二十両で開店に何もかも間に合うセット

うん、十両の分でいい？

お、お客様ぁ〜悪いことはいいません、はい、

ここは、ひとつ看板屋に騙されたと思って、この三十両の方・・・・

なに？騙されるのはイヤだ？安く済ませたい、なるほどねぇ

そんじゃ、こういたしましょ、中ァ取って

二十両の看板、これなんか、どうですぅ〜

うん？なんか気にいらない？第一、値段が気にいらない？

なるほど、そうでしょ、そうでしょ、

んじゃ、アタクシも乗りかかった船、今更、降りるわけにもいきませぬ

この二十両のセット、十五両に、特別出血大サービスで・・・・

なに？もう一声、十両にまけとけ？

そ、そんなぁ、お客様、アタクシはもう、泣いてんですよ

もっと泣け？そして勉強してくれ？

えぇい〜

もう・・・・・・どうしよ。

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「たちまちに　　雑言飛ぶや　　冷奴」　　　　　　相馬　遷子

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いっそのこと

全〜部貼り替えたらどうどす、

ちまちま、しないでサ

余計、お金かかっちまうだよ、

まかせて、まかせて、

出来も、予算も、集客も・・・・って

そう、ポンポン、ポ〜ンって一度でいいから言ってみたいやね

あ、そうですかぁ

住所だけ書き変えて

電話はそのままで、ＦＡＸ番号は変更して

地図の半分だけ残して書き替え

もう、イラ、イラ、忍耐、我慢、辛抱

それが商いの王道でっせ

お客様の、ご希望通りして差し上げるのが

あぁ〜と、そんなに差し上げちゃ、落っこちるよぉ〜

・・・・んで、予算は

ばか、予算の話はよさんかぁ

そんな余裕なんて、ありはせんのよ

ん〜・・・もうぉ〜

忍耐、我慢、辛抱・・・・・

アタクシが一番苦手な熟語ですわ

一に、ニンタイ

二に、ガマン

三、四がなくて

五にシンボウ

六がロクデナシで

七がナキムシ

八がハッタリで

それから〜・・・・・・

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「紫陽花の　　こころ変りは　　雨のせい？」　　　　　　　　銀星

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看板屋にとって、こんなにもグテ〜としてしまう

連休って、嬉しくもあり、嬉しくもなしダワ、

ひと月稼がなきゃならねぇ数字を追っ駆けんのに

日数が少ないじゃんかよ

ギュ〜と、根詰めて働けって

そう、天が、御命じになっても

アタクシの能力など、たかが白衛門、

まぁ、日頃バタバタ、ホロホロ暮らしているので

たまには、人並にゴロゴロしたらって・・・・・

でも、銀ちゃん、日常、ゴロゴロしておりますデス

シャキ〜ンとしなよシャキ〜ンと・・・・・

そう、明日から

目の色変えて（今までは鳶色、じっと見てると吸い込まれますよ）

がんばろっと

根が貧乏性なのでしょうね

ちょこと休むと

バリバリ、バリ〜ンの反動があるのレス。

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「さくら散り　追いかけるものは　無のこころ」　　　　　　　　銀星

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また、また古い話で恐縮の重ね餅

２５年も前の話じゃ許せよ、

ちょうど、あっしが生まれたころです・・・・？

３色からなる、文字可変式のＬＥＤ看板

値段は〜・・・っと一台２００万以上したかな、

それを、ひょんなことから

取付専門でお願いされることになりました、

看板屋さんで電気工事士の免許持ってて

イケメンでやさしい人を捜したんだって

ちょうど、それに

やさしさと、イケメンじゃないことに目ェつぶって・・・・

四国に１０台、広島に５台、福井に３台

東京に１０台、大阪近辺に１００台と・・・

これを、行きましたぁ

バブルの頃ですぅ

お金・・・・よかったですぅ

東京に出張して、温泉入って、おみやげ買って

あれ買って、こんなものまで買って

まだ、お金が残るくらい

そりゃ〜あぶくのような・・・（ゲップ）

短くも、はかない、いい時が、瞬間流れました、

それに比して、今どうですぅ

・・・・ってそれを言っちゃ、おしまいだよ。

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昔、自動車保険の袖看板ばかり

専門で３年間、さぁ〜合計何本取付たかなぁ

１００とか２００じゃきかないなぁ

お陰さまで600ｘ2700を一人で短時間に

こなせるようになりました、

南は和歌山白浜、北は京都の舞鶴と

自動車整備会社を、毎日、毎日まわっていました、

ある日、到着してロープ解いて

作業完了まで何分かかるか計ってみました、

もちろん、穴掘り、パイプ（角パイプ100ｘ100）立て込みあり

それが、恵まれてるというか

すぐ横に水道あり、おまけに使っていい砂の山

ついでに適当なグリ石ときた

烈風のごとく鬼神が暴れた結果・・・

な、なんと３８分と嘘のような作業時間

これを毎日ひとりで、やってたんだなぁ

若かったというか、飯くうのに精一杯働いていた

まだ、バブルの前の話

盛り土に看板立てて、

すぐの大雨で傾いたり、触っちゃいけない

電気触って停電にしたり

舞鶴まで行って、

看板作業の途中からポツポツ雪

終わって帰る頃には銀世界

帰途の観音峠はブレーキかけるたび

トラックが横向いて

生きて帰れたら、儲けもん気分

——
それでも

今より、なぜかしら、儲かったような

そんな懐かしい思い出

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「せつせつと　目まで濡らして　髪洗ふ」　　　野澤　節子

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