『伊勢路の旅人』
「おう、黒板屋の若旦那ぁ」
「え?もう若旦那じゃない、そんじゃ、バカ旦那」
「もう、ここですよ、今日の泊まりは」
「東海道四十七番目の関宿?」
しかし春、真っ盛りだというのに寒いねぇ
「若・・・旦那、そんな薄着だと風邪ひきますぜ」
何?連れが遅れてやってくる?
お客は伊佐蔵さんと、あっしだけじゃない?
いいえ、客でも何でもない人?ふ〜ん、誰だろ、
あっ、断っておきますが
銀ちゃんだって、お客様じゃないからぁ
ないからぁ〜って、どうしても来てくださいって
そう何度も、何度も頭下げるもんだから
何、頭の話は伊佐蔵さんとあたしの前じゃ、よして欲しい
どうしても、伊佐蔵さんが自分の未来のようで・・・
なぁるほど・・・・そいつぁ気がつかなかった、禁句だね「頭」「毛髪」
はげましの言葉とか・・・・・あっもういい、
それじゃ「絵」の話でも・・・・・
銀ちゃん、さっきから何言ってんのか全く意味がわかりませんよ
銀ちゃんの・・・絵?
あぁ、あれなら、ベットの高さ調整の敷物に・・・・してる、
誰が?
うちの、きれいな奥様が・・・・・
ん?ほんとう?
「ホント」
アハァ・・・・・絶句。
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「春雨や 暮れなむとして けふもあり」 蕪村
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