『看板屋らしく』
・・・・で、お客様、ここからはビタ一文も、おまけするわけにはまいりませぬ、
そんな、堅いこと言わんと、もうちょっと、まけてぇなぁ〜
ダメ、ダメ、ダメ、ダメ。
あと、一声だんがな、
あの〜お客様、その一声がワククシめの、明日の米代・・・・
またまた、看板屋さん、ボロい商売やろ
いいえ、ボロはボロでも、心は錦です、
ほな、その錦ついでに、なぁ、あと百文
お客様ァ〜これ以上善良な看板屋をいじめないで・・・・・
だから、善良なんやろ、善良な庶民に耳傾けて、な、
断っておきますが、お客様は決して庶民じゃありませんよ
ビルを20も25も所有していて・・・・・庶民?
あんなぁ、看板屋の兄ちゃん(爺ちゃんに非ず)ここだけの話
見た目は派手に見えるやろ、ところが中身は四苦八苦なんや
四苦八苦の人が金の腕時計に外車乗りますかぁ?
あ、コレ、コレかぁ、これは、み〜んな借り物なんや
そ、そんなぁ・・・・とにかく、この見積り金額変える気はありませんから、
さよか、こんだけ頼んでもあかんのやったら、もう、えぇわ、ほか 当たってみるわ
ほかって?
松原の不幸せ企画はんや、平野区のスズキ商店、鶴見の大道迷工 とか、
あの〜言っておきますけど、当社が一番良心的な看板屋ですから・・・・
そら、むこう言って話聞いてみるまで、わからへんわ
お客様、悪いことは言いません、あっち、こっち行かなくても・・・・
ほな銀ちゃん、あと二百文(増えてるぅ〜) まけてくれんのかい
えぇい、もう、清水の舞台から飛び降りてぇ・・・・・
(こうやって去年、何回 飛び降りたかな、もう身体、ボロボロやん)
そうかぁ、おおきに、銀ちゃん、えぇとこあるがな(ニコニコ顔)
お客さん、その代り、取り付け完了時現金決済おねがいしますね、
わかってるがな、サラのお札で払ろたげるわ、
(サラでも古でも・・・・あぁ、もう・・・また、まけてしもた)
お〜い、銀ちゃん、いつもの機関銃トークで応戦せなあかんやろ、
わかってらぃ、わかって・・・・あのトークは
無駄話用じゃ・・・・それが悪いか!!
何か、機嫌悪そう、
仕事決まったんでしょ、
喜ばな、ほら、笑顔、笑顔・・・・
そ、そんな急に笑える・・・・かぁ、
笑わな、しゃないやろ。
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『 望むは見上げ 願うは垂れて 初景色 』 寺井 谷子
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