『カンナヅキはいいだろう』
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雨に濡れるコト覚悟の上で現場へ
忙しいかって?
あのね、
忙しい人間が、掃除ばっかしてる訳ないでしょ、
景気はどう?
何で俺に聞くの?
言い訳ないっしょ、
ほら、俺らの顔色見りゃわかるでしょ、
酔って紅い顔してるから、わからない?
やけ酒?
違いますよ、
いつもの嗜みですかねぇ?
もう、それっぽっちで 酔ってる?
ちょいと、話聞いてくださいな、
あのね、電話でね、看板屋さんに決めたって・・・・・
そこまではいいんですよ、
他社にはコンタクト取らないって言いながら
友達の看板屋4〜5社見積もり取ってんですよ
あんな、カワイイ声して(顔は知らないんデス)
これが、呑まずにいられますかぁ〜
えぇ、そんなコトでいちいち酒のんでたら
人生に溺れるって?
ハイ、返す言葉が見当たりません
もう
あっしは土左衛門でゲス
えっ、そんな元気な土左衛門は見たことがない?
あっ、そうですかぁ
フム、ふむ、フム・・・・・・。
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だから、最初から申し上げてるように
看板さえ出せば、お客様がやってくるなんて・・・・
そんな虫のいい話があれば
ワタクシがワタクシん家の「看板屋」の看板揚げて
もっと売上伸ばしますデスヨ
ここんところが、哀しい物語なんですぅ
看板屋の看板、見たことありますかぁ
ネっ、どうってことない代物でしょ、
医者の不養生
紺屋の白袴デス
看板屋の看板娘ってカワイイ娘がいた試しがない、
えっ、ウチ、うちは例外
うちの娘はワタクシに似て
そら、あかんわ・・・・はないですよ
いっぺん、お目通りさせましょか
やめておいた方がいい?
また、娘さんに叱られる?
その話
解せませんねぇ〜
フム、フム、フム。
☆
☆
あのぅ、今日は半年前のお話で
いよいよ、稟議もおりて
そろそろ決めてゆかねばの係の人
仕事また、ひとつ
「ありがたきかな今朝の光」って言うの?
その足で
地下鉄に乗って
次なる現場調査、
エステティック サロン
流行るかどうか、ワタクシ、経営コンサルタントじゃないので
一言だけ
看板にお金かけた分、お客様は来る・・・・
そう、信じて看板しましょ、
もしも、売上が伸びなかったら?
それは、看板以外の要因で・・・・
って、そんな無責任なこと・・・・・・
言ってる?そ、そんなぁコト
神様じゃないから・・・・・
でも時々、神様押しのけて
「大きな看板にしましょ」 って・・・・勧めてるって?
・・・・・ムムッ
次に奈良へゆく
前に営業に来た人が二週間経っても
見積もり送ってこない
んなぁ、もったいない
今日は、あっち、こっち営業三昧
決まるといいなぁ
イヤ、ぜってい、決めねば・・・・・
例の安売りでっか?
んにゃ、ワタクシにとって
看板は魂どす(急に京都弁)
タマシイの安売りはでけしまへん、
・・・・って
いっぺん、ゆうてみたいもんだす、
タマシイの本音は
ナンボでもええから、仕事欲しいねん
*****
そら、アカンワ。
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「イロ男 オダテに乗って イロ男」 空次郎
☆
看板屋さんの仕事はキリがない、
スコップで穴掘るでしょ、
セメントこねて、
その間にも、お客様から次の仕事依頼、
よせばいいのに、ここぞと、営業トーク、
しなくていい値引きに、余計なサービスのテンコ盛り、
天井裏で配線探って
壁ぶち抜いて電源取り
分電盤にタイマー仕込んで
入口ドアにシート貼り、
それが済んだら、古い看坂の撤去
高所作業車でウィ〜ンと
ネオンが切れてるので修理
下からお客様
「出かけるから、今払っとくネ」
領収書、領収書、印紙、印紙っと、
端数はまけときますから、なんて口が裂けても言いません、
もう口は災いだらけで・・・・失敗の重ね餅、
え〜、端数・・・・・・あ〜ぁ
この端数が儲けですやん
嘘ばっかり、この看板屋ァ
嘘じゃないですったらぁ・・・・・・・
結局、消費税分くらいまけさせられて・・・・・
久しぶりの一万円札の対面に機嫌を直して
最後に丁寧に看板拭いて
(まけさせられた分、手ェ抜いて・・・・声が大きいョ)
そんなコトは、看板屋さん、しませんよネ
アッハハハ・・・・ハァ
しません、しません、
帰りの車からの夕景色は
もう、すっかり秋。
☆
☆
あのぅ、ず〜と前、昔、以前の話、
文字書きとして看板屋さんに行くと
10時のお茶と、お昼のご飯と三時のお茶が出た
ヘタすりゃ、送り迎えアリ
これって、やっぱ、技術職、職人中の職人の腕
・・・・で、何日か、通うと
本来の噺家みたいな、話、おしゃべりを
やってしまって、
そのうち、文字書き屋さん
口動かさないで、手ェ動かせて・・・だって
何となく、お茶とか、お昼とかに
距離が出てくるようになって・・・・・
でも、しかし、けれども、
文字書く、腕は、確かだった・・・と自負
しゃべりと同じくらい、うまかったス
んじゃ、たかが知れてんじゃん
なんて言うでない
今、その時のこと思い出そうとしたら
ず〜と、ず〜と
遠くを、懐かしい目で追いかけて
過ぎたことは
み〜んな美しい
これから
これから先の方が
もっと美しい(?)・・・く、あれ。
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今日は、一ン日、インクジェットで印刷、
・・・・でも看板屋さん、
フォトショップで、今まで、どうやっても、できなかったコトが
参考書読んで・・・・わかった、
嬉しいのは嬉しい・・・・・これでも看板屋さん、
イラストレータのデータ
CS5で送られて来た、
ウィンドウズじゃ開かない
家のMACのCS5じゃないと開かない
お家に帰って開いて、「10」に落として
USBに保存しようとしたら
空き容量不足で入らない
メールでも飛ばない
仕方ないのでUSBのデータを泣く泣く、いくらか捨てる
何とかデータ保存できた
ただ、いちいち、変換、保存に時間が
半端じゃないくらいかかる
フッとため息、これでも、やはり看板屋さん、
こんなに、こんなに取り巻く環境が変わるなんて
明治維新の時以来だな
・・・・って、知らないけど
まぁ、ちょっとした産業革命、
どうせなら
ぬる〜い 、政治の
維新が始まらないと
日本は間に合わないよ
なんで、時が無為に過ぎてゆくことが
苦しくないのか・・・・不思議だな、
みんな
幸せに暮らす権利があるのに
義務ばっか
押し寄せてくる
こんな世の中の
場面転換・・・・早くしてクダサイヨ。
泣き言を言ってるんじゃないのです、
もう泣きたい気分もとっくに、どっかに置いて来ました、
もちろん期待なんてしません、
だけど
自分の心が折れないようには
時々、心の中で
自分で自分を笑わせてやってます、
「ニタッ」としても
決して、おかしな奴だと思わない・・・・で
最初から、おかしな奴・・・・なんだけど・・・・・。
☆
昨日、何してたんだっけ、何処行ったんだっけ、
そう、そう
仲間内の看板屋さんの、お手伝い、
面白かった
前半は、知恵の出し比べ
要は
結果から、どう考え起こせるかが現場のチカラ
どこまで想定できて、どう詰めることができるか、
意外と、好きなんです、こういうコト
まるでパズルのような現場仕事が、
後半は大きな窓ガラス22枚に
フォグラスシート貼り
一枚当たり3分で貼り終えるよう
まるで流れ作業、繰り返し
自慢の頭より、筋肉の連動
しかし、頭が先行
仲間内から「貼り屋さん」の賞賛
ホントはホントは、
シート貼り、そんなに好きじゃない
だって面倒くさいもん
帰り支度の時は
まるで昨日の台風の吹き返しのような突風、
今年は雨に降られて
風に吹きまくられて
厳しい現実を叩きつけられるような
そんな日が続く
働き人、職人、労働者は
額に汗する
そんな喜びも知っている
明日、明日も
元気で働いて
そうして感謝の気持ちを
心のお返しをしてゆこう。
☆
☆
*
え〜看板屋という商いを長〜くやってきました。
最初は「看板屋さん」になろうなんてコト
爪の先ほども考えいなかった、
・・・・で浮草のように流れ流れて
気が付けば、よ、四十年になろうかと言うほど
呆れかえるくらい、年月を重ねて・・・・いました、
ワタクシ
いつも、いつも、若手、新人、青二才の席に座っておりました、
今、「若い」 という言葉が使えないほど、外見も内面も
ヨレヨレに草臥れた、おそらく、この先も完成されない
そんな、所謂「大人」
厳しく言うなら「老境」の入り口にさしかかりました、
何にもしなくても歳だけはとってしまう
生きとして生けるものの宿命とはいえ
個々個人にとっては
容赦の無い現実
でも、しかし、けれども
歌舞伎の世界、六十、七十、洟垂れ小僧
ワタクシもまた、
まだまだ、幼い未完成な看板屋
最近つくづく
その人にないものは出てこない・・・を実感
たくさん、いっぱい、溢れるほどの心の引きだしを
どう、皆様にお見せしてよいやら・・・・・
あの〜
ないものを、いかにも、いかにもは・・・・・滑稽なり
ないか、あるか、
乞う、温かくて、優しい眼差し、
慈愛の精神で、お付き合いくださいませ。
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だからぁ〜、ごちゃ、ごちゃ言ってないで
目の前の仕事を片付けるコト
あっ、使った道具は元あった場所に
いらないよ、そんな中途半端な寸法の材料は
今度使う、今度使うって、もう十年だよ、
思いきって捨てる
これが次なるステップだって、
え〜もったいないじゃん、
だからゴミが溜まって、その分、お金が貯まらない
な〜るほど、
道理でゲス
捨てる勇気
持てるかな
ちっちゃい自分を捨てる
難しいケド
ず〜っと 、ちっちゃいまんまの自分
それでも
何かを捨てなきゃ
新しい自分に遭えないよ
断捨離
一見、仏教用語のようだけど
どうして、どうして、奥は深〜いワ。
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