『頭の中のエンピツ』
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「看板屋さん、このデザインの中で看板屋さんだったら・・・・・」
「ウ〜ン、全部ワタクシが描いたデザインですからぁ」
「その中でもどれが好き?」
「いやぁ、お客様、お客様はどれが好みですかぁ」
「それがねぇ、迷っちゃうんですよ」
「はぁ」
「どれも、ドングリの背くらべでさぁ〜」
「・・・・その中でも・・・・・」
「看板屋さん、明日までに私が考えます」
「・・・・・・・・」
「明日、取りに来てよ」
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(な、七点も、否定しやがって・・・・くそォ〜
お世辞でも全部いいから迷ってるとかなんとか、言えないものかねぇ
こちとら、もう、この道40年やってんだよ、
あのねぇ、お前様が幼稚園のころから看板描いてんだぞ、
見損なっちゃいけないよ
こう見えたってねぇ
こう見えたって
俺ら・・・・・ただの看板屋だぜ
・・・・・・って言えたら・・・・どんなにいいだろナ)
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「ゆっくりと 悲しむために 吾亦紅(われもこう)」 櫂 未知子
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