『深川めし』
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「看板屋さん、ここんとこ、もう少し違う色にできない?」
「はい」
「今、流行のカラーかなんかでさぁ」
「はぁ」
「やっぱ、若い人じゃなきゃ無理?」
「いいえ」
「テレビとか見てるぅ〜」
「はい、人に負けないくらい見てマスです」
「ふ〜ん、雑誌とかは?」
「コンビニで叱られるくらい読んでますぅ〜」
「そう、じゃ何がいけないのかな?」
「いけない?」
「・・・じゃなくてぇ、感覚が今じゃないんだよねぇ」
「ナウい気持ちは持ってますデス」
「そ、それ、それが古いんだよねぇ〜」
「あのォ、お言葉ですが、今は流れて、過ぎゆく運命ダス」
「・・・・・・・」
「だから、また、ワタクシの感覚を受け入れる時代はきっと来ると思うんです、ハイ」
「あっ、そうだね、じゃ、その頃、また来てよ」
「はぁ」
「ところで看板屋さん、それまで健在かな?」
「はい、足がなくなっても枕元で・・・・・・」
「や、やめてよォ」
「だ、よね。」
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「少しづつ 吹かれてをりし 女郎花(おみなえし)」 岡田 史乃
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