『麦の穂ひとつ』
「銀ちゃん、いるか〜い」
「あっ、と、富次姐さん・・・・・」
「どうしたのさ、そんなびっくりした顔して」
「え、いや、あの、何か、ご用で」
「あのさぁ、税理士さんに頼まれちゃってサァ、また、変な、お絵描きしてないかって」
「変な絵じゃないデスよ、うまくは、ないけど」
「う〜ん、ヘタじゃないけど、何となく哀愁があったりして〜
そこんところだけ、いいなぁ・・・・とか」
・・・・・って、これ、ぜ〜んぶ、本人の感想なんだから
世話ねぇや、
「銀ちゃん、また、ブツブツ言ってないで
ちゃんと、お仕事するように・・・・・」
「は、はい」
「だけど、おまえ様の顔、どこから、どう見たって
哀愁の「あ」の字もないんだねぇ〜」
・・・・・・・・・・・・・・
好き勝手言って行っちゃったけど、いい気なもんだねぇ〜
お絵描きなぁ
商売になるようなもの・・・・そりゃ、ムリだよな。
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