『満天星の花』
*********
「銀ちゃん、おまえさんは看板屋さんだよね」
「何ですか、今更・・・・」
「おまえさんの看板のデザインはいつも同じだねぇ」
「は・・・・・・・・ぁ」
「何か、こう、もう少し職業人の工夫というか、人様を
うならせるようなものは、できないもんかねぇ〜」
「はァ・・・・・・・(汗)」
「それにさぁ、余ってる色に合わせてデザインするっていうのも・・・何だか・・・」
「はァ・・・・・・(言いたい放題じゃん)」
「それからさぁ・・・・・・」
「まだ・・・・何か・・・」
「作りやすいように都合がいいことがデザインの優先順位に
なってや、しませんかぁ」
「グゥ・・・(耳が痛いや )」
「好きで毎日看板稼業に精出してんでしょ」
「は、はい」
「それじゃ、もっとさぁ、チャレンジ精神というか冒険しなさいよ」
「はぁ・・・ご意見は、ごもっともなんですが、ひとつだけいいでしょうか?」
「なんでしょ」
「富次姐さんは私のこと、いろいろ言ってくれるのは有難いのですが
あなたは、私の何ざんしょ」
「何って言われても、赤の他人、ただの隣人ですけど・・・・」
「ですよね・・・・・ただの・・・・隣人」
(ただの隣人に、ここまで仕事のこと、とやかく言われなきゃ
いけないのでしょうか・・・・でも、言ってることは、癪にさわるけど
いちいち当たってるしなぁ〜・・・・・・・)
「何、ブツブツ言ってんのさぁ、それで、わかったのかい?」
「は、はい」
「そう、それなら・・・・・まぁ、いいかぁ」
「・・・・・・・(チキショー)」
「あら、何か言ったぁ」
「い、いいえ・・・と、とんでもございませんデス」
「まぁ、がんばって」
「・・・・・・・・(涙)」
☆
☆
『わがままの 数だけ老いて あたたかし』 柴田佐知子
☆