『時雨雲』
「相見積もり」が、当たり前となった昨今、
数字だけで、篩いにかけられた悔しさを
「こ〜んな親切な看板屋さんと縁がないなんて、お気の毒様ぁ〜」
仕事逃した俺らはもっと、お気の毒サマ。
でも、
安けりゃいいだけの、付き合いも寂しいと言やぁ、寂しいねぇ〜
(・・・・・かなり根に持ってるようダス)
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「銀ちゃんさぁ〜看板の相場ってあるんだろ?」
「はい、あるといえばあり、ないと言えばないかな?」
「おい、おい、どっちなんだよ」
「看板って百種百様、頼む人によって千差万別、
いろいろじゃないですか、大きさ、形、とくに
取り付けともなると、現場の状況で大きく変わるんでさぁ」
「なるほどなぁ、画一にはいかねぇってワケかぁ」
「だから、同じ物件の見積もりの差が、随分開く場合もあります」
「ふ〜ん」
「それはねぇ、作り方、取り付け方法、取り付けの日付や時間帯に
よっても、変わってくるんですよ」
「案外、一番変わるのは銀ちゃんの腹の中じゃないのかい?」
「えっ?」
「ほら、ちょうど、入用なお金が不足してるとか、何か欲しいものがあるとか」
「と、とんでもございませんデス、男、銀次郎、痩せても枯れても(充分枯れてますよ〜)
そんな私利私欲で動いちゃ・・・そ、そんな、あの、その〜・・・お金が・・・・そんなぁ・・・」
あっ、雨だ、
こいつで、またぁ、寒くなるぜ、
今年の年の瀬は、いろんな意味で寒い師走になるんだろなぁ〜
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