『旅を往く』
「おう、紳さんに雅吉さん、どうしたぃ二人して、何だかションボリ肩が落ちてるじゃネェか」
「あぁ銀ちゃん、夕べさぁ、この紳の字つれて浜まで魚釣りに行ってきたんだよ」
「ふ〜ん、このご時世に、けっこうな身分じゃネェか」
「そ、それが、そうじゃねんだよ、ほら、毎月、寄り合いの呑み会、知ってるだろ」
「あぁ、俺らも、たま〜に出させてもらってる、大層な肩書きだけど、中身はただの呑み会だろ」
「もうォ、そう言われたら、ミもフタもねぇけどさ」
「そこで、俺らが月当番の役割でさぁ、何で一杯呑もうかっていうことになって、
雅吉が今の時期なら、浜でチヌが死ぬほど釣れるからって・・・・・」
「ふ〜ん、それで釣りに?・・・で首尾よくチヌは釣れたのかい?
「それがさぁ、二、三日前は捨てるほど釣れたんだが、どういうワケか、
全然、まったくからっきし・・・・・」
「そいつぁ、お疲れさんだったねぇ、で、酒の肴はどうするつもりなんだよ」
「そ、それなんだよ、それが、まだ決まちゃいないから・・・・こうして」
「魚屋で買ってゆけば・・・・・・」
「俺らも、雅吉に、そう言ってんだけど、こいつが、どうしても、今晩、
釣って来るって聞かないんだよ」
「雅吉さん、今夜は釣れそうなのかい?」
「う〜ん、そいつがわかれば、こ〜んな顔してや、しませんよ」
「あれ〜チヌ(死ぬ)ほど釣れるんじゃなかったのかい?」
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今頃、どうしたろうな
釣れたかな、それとも今夜も坊主かなぁ
坊主といやぁ、いい月が出てるねぇ。
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